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(日本語) 帯久

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パリから来客がありました。

来年1月のパリでの見本市出展に向けて、お手伝いをお願いしているウォーターさん夫妻がご来社されたのです。

ウォーターさんは、ベルギー出身で、今はパリ在住です。

打ち合わせを進めて行くうち、契約の話になりました。

「契約書はどうしますか?」

私からの問いに、ウォーターさんは、

「契約書は、いいんじゃない。」

「でも・・それでいいんですか?」

「契約書の有無は、私は気にしないし、要は気持ちの問題でしょ。」

「そうですね。ありがとうございます。」

彼とそんな会話をしながら ”帯久(おびきゅう)” という落語を思い出していました。

江戸時代、繁盛している呉服屋の 和泉屋(いずみや)がありました。

その近所で同業の帯屋(おびや)という、陰気でお客のこない、通称 ”売れず屋” という店があります。

3月のある日、帯屋の主人が、和泉屋へお金を借りにきます。

和泉屋の主人は、証文なし・期限なしで貸してあげます。

20両貸して、20日経たないうちに返済されます。

そして、5月に30両、7月に50両、9月に70両と貸しましたが、やはり20日も経たないうちに返済されます。

その度に和泉屋の主人は、こう言います。

「返す気持ちがあれば証文なんていりませんよ。要は気持ちですよ。ご飯でもご一緒しませんか?」

和泉屋の繁盛ぶりの一端が、主人の人柄であると、この会話から伺えます。

その和泉屋とウォーターさんがかぶって見えたのです。

打ち合わせ後、一緒に和食を食べに行きましたが、ウォーターさん上手にお箸を使っていました。

「お箸をうまく使えますね。」

「ドーモ。」

笑顔でお箸をパカパカと開いたり閉じたりするしぐさを見せる彼に、末長くお付き合いしたいと思いました。

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